西の魔女が死んだ 作品集

 

いつ読んだのが最初だったのか、

 

もう覚えていない。

 

たぶん、どこか図書館で出会ったのだ。

 

内容も覚えているのに、

 

どうやら私の本棚にはなかった。

 

私が梨木果歩に出会った最初の本。

 

昔から、「魔女」「妖精」「魔法」みたいな

 

目には見えない、ファンタジーなものが大好きだった。

 

ハリーポッター魔女の宅急便も好き。

 

ティンカーベルは一時私のトレードマークのようなものだった)

 

ハーブ、花、木、紅茶の香り

 

ふわりと包んで薫る。

 

鶏の鳴き声を少しうざったく感じたし、

 

おばあちゃんの穏やかな

 

「ナイ ナイ スウィーティ」も

 

ラベンダーのシーツにくるまれて深く息をつく感覚も。

 

こどもの私じゃ香りだってわからなかったはずなのに。

 

いつもパジャマで、畳の部屋に布団をしいて寝る私が、

 

カントリーな部屋のベッドにいた。

 

自分がまいになり、

 

おばあちゃんのことを心から敬愛していた。

 

 

私の祖父は1年半前に亡くなった。

 

小さな離島の漁師だった。

 

だいすき、と言ったことは一度もない。

 

私と祖父のあいことばは、

 

なんでも、「それでいいんだ」だった。

 

すべてを与えて、ゆるすひと。

 

誰かが亡くなった後は、

 

終わり、ではない。

 

喪失でもない。

 

あたたかな、別離だとおもった。

 

ほんのひとたび。また会う日まで。

 

祖父の形見分けに、本をもらった。

 

祖父の若い頃の記憶と一緒に。

 

そうしてまた、それでいいんだと

 

祖父の声が潮風と共に


穏やかにこれからも私と寄り添うのだ。

 

西の魔女が死んだ 梨木香歩作品集