西の魔女が死んだ 作品集

 

いつ読んだのが最初だったのか、

 

もう覚えていない。

 

たぶん、どこか図書館で出会ったのだ。

 

内容も覚えているのに、

 

どうやら私の本棚にはなかった。

 

私が梨木果歩に出会った最初の本。

 

昔から、「魔女」「妖精」「魔法」のファンタジーセット。

 

目には見えないせかい。

 

ハーブ、花、木、紅茶の香り

 

ふわりと包んで薫る。

 

鶏の鳴き声を少しうざったく感じたし、

 

おばあちゃんの穏やかな

 

「ナイ ナイ スウィーティ」も

 

ラベンダーのシーツにくるまれて深く息をつく感覚も。

 

いつもジャージで、畳6畳間にちぐはぐな柄の布団でねるわたしが

 

カントリーな部屋の木のベッドでリネンの真っ白なシーツで寝起きした。

 

自分がまいになり、

 

おばあちゃんのことを心から敬愛していた。

 

 

私の祖父は1年半前に亡くなった。

 

小さな離島の漁師だった。

 

小説のように、だいすき、と言ったことは一度もない。恥ずかしくって。

 

祖父はいつもわたしの話を聞いて、

 

大きい手で撫でて「それでいんだ」と満足そうに笑って言葉を結んだ。

 

誰かが亡くなった後は、

 

終わり、ではない。

 

喪失でもない。

 

あたたかな、別離だとおもった。

 

ほんのひとたび。また会う日まで。

 

たとえ姿が遠くにいっても、


祖父の声は穏やかにこれからも私と寄り添うのだ。

 

西の魔女が死んだ 梨木香歩作品集